eMAXIS Slim 新興国株式インデックス、SBI・新興国株式インデックス・ファンド、ニッセイ新興国株式インデックスファンド、楽天・バンガード・ファンド(新興国株式)の4つのファンドについて比較考察していきます。これらのファンドよりも純資産総額が大きなファンドがありますが、信託報酬が高かったり、信託財産留保額をとられるなどの理由から割愛いたしました。ご了承ください。
eMAXIS Slim 新興国株式インデックス
ファンドの概要
新興国市場の株式に投資し市場の動きに連動した投資成果を目指すインデックスファンド。ベンチマークはMSCI エマージングマーケット・インデックス(配当込み、円換算ベース)
委託会社:三菱UFJ国際投信株式会社 受託会社:三菱UFJ信託銀行株式会社
コストの推移
| 第1期 | 第2期 | 第3期 | 第4期 |
期間 | 2017.7.31~2018.4.25 | 2018.4.26~2019.4.25 | 2019.4.26~2020.4.27 | 2020.4.28~ |
信託報酬 | 0.3672⇒0.3661⇒0.2062%以内 | 0.2062⇒0.20412%以内 | 0.20412⇒0.2079%以内 | 0.2079⇒0.187%以内 |
売買委託手数料 | 0.033(0.045)% | 0.037% | 0.068% | 現在進行中 |
有価証券取引税 | 0.019(0.026)% | 0.025% | 0.040% | 現在進行中 |
その他費用 | 0.084(0.115)% | 0.115% | 0.111% | 現在進行中 |
実質コスト | 0.5532⇒0.5521⇒0.3922%以内 | 0.3832⇒0.38112%以内 | 0.42312⇒0.4269% | % |
注)信託報酬は消費税込みのものを表記しています。第3期の0.20412⇒0.2079%の部分は消費税の引き上げによるものです。
注)第1期は期間が1年より短いので売買委託手数料、有価証券取引税、その他費用について1年に期間補正した参考値をカッコ内に表記しています。それに伴い実質コストも参考値によって計算した値となります。
注)eMAXIS Slim シリーズのファンドでは純資産総額が増えるにしたがって信託報酬が逓減する仕組み(具体的には0~500億円までは通常の信託報酬、500億~1000億円の部分は通常より0.0005%低い信託報酬、1000億円以上の部分は通常より0.001%低い信託報酬)になっていますが、表に掛かれている数値は500億円までの部分に適応される信託報酬です。従って実際の信託報酬はこれより僅かに低いものとなります。そのため信託報酬、実質コストはOO%以内と表記しています。
ベンチマークとの差異
| 第1期 | 第2期 | 第3期 |
期間 | 2017.7.31~2018.4.25 | 2018.4.26~2019.4.25 | 2019.4.26~2020.4.27 |
ベンチマークとの差異 | +1.1%(△0.3%) | +1.6%(△0.7%) | △0.1% |
注)第1期、第2期では配当を含まないベンチマークを採用していたため数値が大きくなっていますが、配当によるプラス要因を除いた値をカッコ内に表記しています。実質的なベンチマークとの差異はこちらだとお考え下さい。
SBI・新興国株式インデックス・ファンド
ファンドの概要
シュワブ エマージング・マーケッツ エクイティETFを通じて新興国の株式市場の動きに連動した投資成果を目指すインデックスファンド。ベンチマークはFTSE エマージング・インデックス(円換算ベース)
委託会社:SBIアセットマネジメント株式会社 受託会社:株式会社りそな銀行
コストの推移
| 第1期 | 第2期 | 第3期 |
期間 | 2017.12.6~2018.11.12 | 2018.11.13~2019.11.12 | 2019.11.13~ |
信託報酬 | 0.0648% | 0.0648⇒0.066% | 0.066% |
売買委託手数料 | 0.083(0.089)% | 0.032% | 0% |
有価証券取引税 | 0% | 0% | 0% |
その他費用 | 0.080(0.086)% | 0.038% | 0.024 |
ETFの信託報酬 | 0.11 | 0.11% | 0.11% |
実質コスト | 0.3498% | 0.2448⇒0.246% | 0.200% |
注)信託報酬は消費税込みのものを表記しています。第2期の0.0648⇒0.066%部分は消費税の引き上げによるものです。
注)第1期は期間が1年より短いため売買委託手数料、有価証券取引税、その他費用について1年に期間補正した参考値をカッコ内に表記しています。それに伴い実質コストも参考値によって計算した値となります。
ベンチマークとの差異
| 第1期 | 第2期 | 第3期 |
期間 | 2017.12.6~2018.11.12 | 2018.11.13~2019.11.12 | 2019.11.13~2020.11.12 |
ベンチマークとの差異 | 0% | +0.7% | 0% |
ニッセイ新興国株式インデックスファンド
ファンドの概要
新興国市場の株式に投資し市場の動きに連動した投資成果を目指すインデックスファンド。ベンチマークはMSCI エマージングマーケット・インデックス(配当込み、円換算ベース)
委託会社:ニッセイアセットマネジメント株式会社 受託会社:三菱UFJ信託銀行株式会社
コストの推移
| 第1期 | 第2期 | 第3期 |
期間 | 2017.10.13~2018.11.20 | 2018.11.21~2019.11.20 | 2019.11.21~2020.11.20 |
信託報酬 | 0.36612⇒0.20412% | 0.20412⇒0.2079% | 0.2079% |
売買委託手数料 | 0.174(0.157)% | 0.063% | 決算未発表 |
有価証券取引税 | 0.46(0.416)% | 0.012% | 決算未発表 |
その他費用 | 1.326(1.198) | 0.407% | 決算未発表 |
実質コスト | 2.13712⇒1.97512% | 0.68612⇒0.6899% |
注)第1期は期間が1年より長いため売買委託手数料、有価証券取引税、その他費用について1年に期間補正した参考値をカッコ内に表記しています。それに伴い実質コストも参考値によって計算した値となります。
注)信託報酬は消費税込みの値です。第2期の0.20412⇒0.2079%の部分は消費税の引き上げによるものです。
ベンチマークとの差異
| 第1期 | 第2期 | 第3期 |
期間 | 2017.10.13~2018.11.20 | 2018.11.21~2019.11.20 | 2019.11.21~2020.11.20 |
ベンチマークとの差異 | △1.9% | △0.9% | 決算未発表 |
楽天・バンガード・ファンド(新興国株式)
ファンドの概要
バンガードが運用する「バンガードFTSEエマージング・マーケッツETF」を通じて新興国株式市場の動きに連動した投資成果を目指すインデックスファンド。ベンチマークはFTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ(含む中国A株)インデックス(円換算ベース)
コストの推移
| 第1期 | 第2期 | 第3期 |
期間 | 2017.11.17~2018.7.17 | 2018.7.18~2019.7.16 | 2019.7.17~2020.7.15 |
信託報酬 | 0.1296% | 0.1296% | 0.1296⇒0.132% |
売買委託手数料 | 0.150(0.225)% | 0.054 | 0.044 |
有価証券取引税 | 0% | 0 | 0.001 |
その他費用 | 0.080(0.120)% | 0.140 | 0.081 |
ETFの信託報酬 | 0.14% | 0.14⇒0.12% | 0.12⇒0.10% |
実質コスト | 0.5746% | 0.4236% | 0.3556⇒0.358⇒0.338% |
注)第1期は期間が1年より短いため売買委託手数料、有価証券取引税、その他費用について1年に期間補正した参考値をカッコ内に表記しています。それに伴い実質コストも参考値によって計算した値となります。
注)信託報酬は消費税込みの値です。第3期の0.1296⇒0.132%の部分は消費税の引き上げによるものです。
ベンチマークとの差異
| 第1期 | 第2期 | 第3期 |
期間 | 2017.11.17~2018.7.17 | 2018.7.18~2019.7.16 | 2019.7.17~2020.7.15 |
ベンチマークとの差異 | △1.2% | △0.2% | △0.2% |
ファンドの比較
ファンドの仕組み
eMAXIS Slim 新興国株式インデックスとニッセイ新興国株式インデックスファンドではマザーファンドから直接株式に投資されています。これはマザーファンド自体が市場インデックスに連動するポートフォリオになっているということです。これがポートフォリオを自前で組成しているという意味です。
SBI・新興国株式インデックス・ファンドと楽天・バンガード・ファンド(新興国株式)ではマザーファンドと株式の間にETFが挟まっているのがお分かりいただけると思います。この場合はマザーファンドが投資し保有するのはETFで、マザーファンド自体が市場インデックスに連動するポートフォリオにはなっているわけではありません。市場インデックスに連動するポートフォリオを組成しているのはETFを運用している運用会社です。これがポートフォリオを外注しているという意味です。
ベンチマーク
MSCI エマージングマーケット・インデックス
新興国市場の大型株と中型株1385銘柄(2020年6月時点)で構成されている指数。
主な国別の構成割合は下図の通り。
FTSE エマージング・インデックス
新興国市場の大型株と中型株1838銘柄(2020年11月時点)で構成されている指数。
主な国別の構成割合は下図の通り。
FTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ(含む中国A株)インデックス
新興国市場の大型株と中型株と小型株の4120銘柄(2020年11月時点)で構成されている指数。
主な国別の構成割合は下図の通り。
最新のコスト
最新の信託報酬、直近の決算で判明した隠れコスト、その2つから計算される実質コストについて見ていきたいと思います。
eMAXIS Slim 新興国株式インデックス | SBI・新興国株式インデックス・ファンド | ニッセイ新興国株式インデックスファンド | 楽天・バンガード・ファンド(新興国株式) | |
信託報酬 | 0.187%%以内 | 0.176% | 0.2079% | 0.232% |
隠れコスト | 0.219% | 0.024% | 0.482% | 0.126% |
実質コスト | 0.406%以内 | 0.200% | 0.6899% | 0.338% |
注)SBI・新興国株式インデックス・ファンド、楽天・バンガード・ファンド(新興国株式)については、投資先ETFの信託報酬を含めた値を信託報酬としています。
新興国株式ファンドでは信託報酬の差に比べて実質コストの差が大きい
ご覧のように新興国株式ファンドでは、各ファンドの信託報酬はそれほど変わらないにも関わらず実質コストの差が大きくなる傾向が見られます。信託報酬の差は最大で0.056%しかないにもかかわらず、実質コストの差は最大で0.4689%もあります。この傾向はポートフォリオ自前型のファンド(eMAXIS Slimとニッセイ)とETF型のファンド(SBIと楽天)との間で強く見られます。
隠れコストの内訳(ポートフォリオ自前型)
実質コストの差が大きくなる理由はもちろん隠れコストが大きいからです。では隠れコストの内訳はどうなっているでしょうか?隠れコストが特に大きいポートフォリオ自前型の2つのファンドについて見ていきましょう。
隠れコストの内訳を同社の同シリーズファンドと比較してみます。
eMAXIS Slim 米国株式 | eMAXIS Slim 先進国株式 | eMAXIS Slim 全世界国株式 | eMAXIS Slim 新興国株式 | ||
【売買委託手数料】 | 株式 | 0.008 | 0.005 | 0.013 | 0.062 |
投資信託証券 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
先物・オプション | 0.003 | 0.003 | 0 | 0.001 | |
【有価証券取引税】 | 株式 | 0 | 0.035 | 0.034 | 0.004 |
投資信託 | 0 | 0.001 | 0.001 | 0 | |
【その他費用】 | 保管費用 | 0.029 | 0.024 | 0.034 | 0.101 |
監査費用 | 0.003 | 0.003 | 0.003 | 0.003 | |
その他 | 0 | 0.001 | 0.001 | 0.007 |
ニッセイ外国株式インデックス | ニッセイ新興国株式インデックス | ||
【売買委託手数料】 | 株式 | 0.001 | 0.049 |
投資信託証券 | 0.002 | 0.011 | |
先物・オプション | 0 | 0.004 | |
【有価証券取引税】 | 株式 | 0.012 | 0.012 |
投資信託 | 0 | 0 | |
【その他費用】 | 保管費用 | 0.040 | 0.341 |
監査費用 | 0.001 | 0.001 | |
その他 | 0.004 | 0.066 |
eMAXIS Slim 新興国株式とニッセイ新興国株式インデックスに共通してみられるのは、株式の売買委託手数料とその他費用の中の保管費用のコストが大きくなっているということです。ポートフォリオを自前で組成管理する場合には新興国の市場で株式の売買を行わなければなりません。その際、先進国の株式市場と新興国の株式市場では市場の取引環境(手数料等)が異なるためこれらのコストが大きくなっていると考えられます。
またニッセイ新興国株式インデックスではその他費用の中のその他のコストも大きくなっています。この項目は信託事務を処理するのに掛かる諸費用などを表します。こちらも新興市場ということで先進国の市場に比べて事務処理の費用が大きくなっていると考えられます。
まとめ
ポートフォリオ自前型のファンドの場合は、投資対象が新興国市場に上場されている株式(ポートフォリオを組成するため相当数の銘柄)であるため、新興国市場での売買委託手数料や保管費用のコストが大きくなり、隠れコストが高くなってしまうようです。これに対してETF型のファンドは投資対象が米国に上場されているETF(しかも1銘柄)であるため隠れコストもそれほど大きくありません。新興国市場の株式を投資対象にするか、米国市場のETFを投資対象にするかというファンドの仕組みの違いがここに顕われています。
新興国株式ファンドにおいては運営管理のしやすいETF型のファンドの方がコスト的に有利なようです。特にSBI・新興国株式インデックス・ファンドのコストの低さは優秀です。
ベンチマークとの差異
インデックス運用はベンチマークに連動する運用成果を目指すものなので、たとえプラスであってもベンチマークとの乖離が大きいのは良いことではありません。ファンド選びの際はベンチマークとの差異もチェックしたいところです。
ベンチマークと乖離する要因としては、投資先ETFの売買執行コスト、分配金に対する課税、ファンドの信託報酬などがあります。
| 第1期 | 第2期 | 第3期 | 第4期 |
eMAXIS Slim 新興国株式インデックス | △0.3% | △0.7% | △0.1% | 現在進行中 |
SBI・新興国株式インデックス・ファンド | 0% | +0.7% | 0% | 現在進行中 |
ニッセイ新興国株式インデックスファンド | △1.9% | △0.9% | 現在進行中 | |
楽天・バンガード・ファンド(新興国株式) | △1.2% | △0.2% | △0.2% | 現在進行中 |
税制優遇制度
iDeCo、つみたてNISAは証券会社によって購入できる商品のラインナップが異なるので、どこの証券会社で購入できるかチェックしましょう。(※主だった証券会社を列挙していますが、これが全てではありません。)
iDeCo | つみたてNISA | |
eMAXIS Slim 新興国株式インデックス | マネックス証券 松井証券 | SBI証券 楽天証券 マネックス証券 松井証券 |
SBI・新興国株式インデックス・ファンド | なし | SBI証券 楽天証券 マネックス証券 松井証券 |
ニッセイ新興国株式インデックスファンド | なし | SBI証券 楽天証券 マネックス証券 松井証券 |
楽天・バンガード・ファンド(新興国株式) | なし | なし |
純資産総額
総評
コストについて見てみるとSBI・新興国株式インデックス・ファンド、楽天・バンガード・ファンド(新興国株式)、eMAXIS Slim 新興国株式インデックス、ニッセイ新興国株式インデックスファンドの順になっています。最新のコストの欄でも記述したように、新興国市場の株式を投資対象にするか、米国市場に上場されているETFを投資対象にするかというファンドの仕組みの違いから、ETF型の2ファンドが上位にきています。eMAXIS Slim 新興国株式インデックスは新興国市場の株式を投資対象とするポートフォリオ自前型にしては頑張っていると思いますが、これまでの3期の隠れコストの推移を見るとほぼ横ばいなので、これ以上コストを下げるのは難しいと思われます。
次はベンチマークとの差異について見てみます。eMAXIS Slim 新興国株式インデックスはさすがの安定感という感じの運用が行われています。SBI・新興国株式インデックス・ファンドに関しても第1期からベンチマークとの差異が少ない安定した運用です。ニッセイ新興国株式インデックスファンドと楽天・バンガード・ファンド(新興国株式)に関しては第1期にベンチマークとの差異が少し大きくなりましたがその後改善が見られます。第1期にベンチマークとの差異が大きくなってしまうのはしばしば見られることなのでさほど気にする必要はないと考えます。
最後に人気(純資産総額)を見ていきます。これはeMAXIS Slim 新興国株式インデックスがダントツです。eMAXIS Slim シリーズのブランド力や信頼感、iDeCoの投資対象銘柄になっていること等が要因だと思います。しかしコスト面で明らかにSBI・新興国株式インデックス・ファンドの方が優秀です。信託報酬の差はわずか0.011%しかありませんが、直近の実質コストの差は0.16%もあります。これは信託報酬約11か月分に相当します。ファンドを選ぶ際に信託報酬ではなく実質コストを見て選ぶという習慣が定着すればこの状況は変わるのではないかと予想します。
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