ファンドオブザイヤーについて思うこと

ファンドオブザイヤーについて思うこと 投資信託

2021年1月16日に投信ブロガーが選ぶファンドオブザイヤー、同年2月1日にモーニングスターのファンドオブザイヤーがそれぞれ発表されました。

今回は毎年発表されるファンドオブザイヤーについて思うところをお話ししたいと思います。

投信ブロガーが選ぶファンドオブザイヤー

こちらのファンドオブザイヤーは投信ブロガーの方たちの投票で決まるものです。一人のブロガーが5ポイントを持っていて一つのファンドに5ポイント投じることもできますし、いくつかのファンドに分けて投票することもできるというルールで行われています。

今回発表されたファンドオブザイヤー2020から過去5年分のトップ10の結果を見てみましょう。

歴代の受賞ファンド

参考までに、ファンド名の横のカッコ内に受賞した年の年間リターンを表記しています。

ファンドオブザイヤー2020

  • 第1位 eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)【8.96%】
  • 第2位 ニッセイ 外国株式インデックスファンド 【9.03%】
  • 第3位 バンガード・トータル・ワールド・ストックETF【16.61%】
  • 第4位 セゾン バンガード・グローバルバランスF 【6.50%】
  • 第5位 ひふみ投信【20.52%】
  • 第6位 eMAXIS Slimバランス(8資産均等型) 【1.01%】
  • 第7位 eMAXIS Slim先進国株式インデックス【9.01%】
  • 第8位 eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)【8.99%】
  • 第9位 eMAXIS Slim米国株式(S&P500) 【10.30%】
  • 第10位 農中<パートナーズ>長期厳選投資おおぶね 【15.36%】

ファンドオブザイヤー2019

  • 第1位 eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)【26.82%】
  • 第2位 eMAXIS Slim米国株式(S&P500) 【28.85%】
  • 第3位 eMAXIS Slim先進国株式インデックス【28.89%】
  • 第4位 ニッセイ 外国株式インデックスファンド 【8.96%】
  • 第5位 eMAXIS Slimバランス(8資産均等型) 【16.30%】
  • 第6位 楽天・全米株式インデックス・ファンド【29.84%】
  • 第7位 セゾン バンガード・グローバルバランスF 【14.99%】
  • 第7位 グローバル3倍3分法ファンド(1年決算型)【31.80%】
  • 第9位 バンガード・トータル・ワールド・ストックETF【26.82%】
  • 第10位 SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド【この年の途中から運用開始】

ファンドオブザイヤー2018

  • 第1位 eMAXIS Slim先進国株式インデックス【△11.00%】
  • 第2位 ニッセイ 外国株式インデックスファンド 【△11.09%】
  • 第3位 eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)【この年の途中から運用開始】
  • 第4位 楽天・全米株式インデックス・ファンド【△8.41%】
  • 第5位 eMAXIS Slimバランス(8資産均等型) )【△6.70%】
  • 第6位 セゾン バンガード・グローバルバランスF 【△7.89%】
  • 第7位 バンガード・トータル・ワールド・ストックETF【△9.76%】
  • 第8位 eMAXIS Slim米国株式(S&P500) 【この年の途中から運用開始】
  • 第9位 楽天・全世界株式インデックス・ファンド【△12.64%】
  • 第10位 eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)【この年の途中から運用開始】

ファンドオブザイヤー2017

  • 第1位 楽天・全世界株式インデックス・ファンド【この年の途中から運用開始】
  • 第2位 ニッセイ 外国株式インデックスファンド 【18.61%】
  • 第3位 楽天・全米株式インデックス・ファンド【この年の途中から運用開始】
  • 第4位 野村 つみたて外国株投信 【この年の途中から運用開始】
  • 第5位 eMAXIS Slimバランス(8資産均等型) 【この年の途中から運用開始】
  • 第6位 ひふみ投信【44.82%】
  • 第7位 eMAXIS Slim新興国株式インデックス【この年の途中から運用開始】
  • 第8位 たわらノーロード先進国株式【18.60%】
  • 第9位 バンガード・トータル・ワールド・ストックETF【24.49%】
  • 第10位 iFreeS&P500インデックス 【この年の途中から運用開始】

ファンドオブザイヤー2016

  • 第1位 ニッセイ 外国株式インデックスファンド 【2.68%】
  • 第2位 たわらノーロード先進国株式【3.02%】
  • 第3位 バンガード・トータル・ワールド・ストックETF【8.51%】
  • 第4位 iFree8資産バランス【この年の途中から運用開始】
  • 第5位 セゾン バンガード・グローバルバランスF 【0.49%】
  • 第6位 ひふみ投信【4.53%】
  • 第7位 ひふみプラス【4.62%】
  • 第8位 世界経済インデックスF【1.46%】
  • 第9位 ニッセイ TOPIXインデックスファンド【△0.03%】
  • 第10位 セゾン 資産形成の達人ファンド【0.18%】

受賞ファンドの傾向

こちらのファンドオブザイヤーは投信ブロガーの方たちの投票で決まるので投信ブロガーの方たちの投資に対する考え方が色濃く反映されます。選ばれでいるファンドほとんどがインデックスファンドであることから、インデックス投資を基本方針とする投信ブロガーの方が多く投票されているようです。

「広く分散されたポートフォリオを保有し経済成長の公正な分け前を確実に獲得する」というインデックス投資の基本的な考え方を反映し、その究極形ともいえる全世界の株式に投資するインデックスファンド(表中に青色マーカーで示したファンド)が一貫して高い評価を得ています。ここ最近2年連続でeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)が1位になっていますし、楽天・全世界株式インデックス・ファンドも2017年に1位になっています。またバンガード・トータル・ワールド・ストックETFもトップ10の常連です。

次に先進国株式に投資するインデックスファンド(表中赤色マーカーで表示したファンド)も人気があります。先進国株式は時価総額ベースで全世界の株式の88%を占める(下のグラフ参照)ので、こちらも広く分散されてたポ-トフォリオと言えます。

そのほか米国株式インデックスファンド、バランス型ファンドなど広く分散投資するファンドが多くを占めます。

参考表記した【受賞年のリターン】を見ていただいてもわかるように、その年のリターンが高い順にファンドがランキングの上位に来ているわけではありません。これも短期的なリターンではなく長期な視点での投資を前提とするインデックス投資の考え方によるものだと思います。

モーニングスターアワードのファンドオブザイヤー

モーニングスター社が毎年発表しているファンドオブザイヤー。今年のファンドオブザイヤーは7つの部門があり、ESG型 部門を除く6部門で最優秀ファンド1つが選ばれ、7部門で優秀ファンド複数が選ばれています。

2021年2月1日に発表されたファンドオブザイヤー2020の各部門の最優秀ファンドは下記のようになっています。参考までに2020年のファンドのリターンとそのファンドが属するカテゴリーの平均リターン、リターンの比較を表記します。

ご覧になってお分かりのようにいずれのファンドもカテゴリーの平均リターンを上回る優秀なパフォーマンスを示しています。特に最初の3つのファンドのリターンは物凄いです。こういった結果を見せられると、これらファンドに投資したいという気持ちになる方も少なくないのではないでしょうか。

ファンドのリターンカテゴリーの平均リターンリターンの差
情報エレクトロニクスファンド37.39%18.81%+18.58%
ベイリー・ギフォード
世界長期成長株ファンド
83.47%7.00%+76.47%
グローバルAIファンド
(為替ヘッジあり)
96.64%17.31%+79.33%
投資のソムリエ4.36%0.77%+3.59%
ピクテ・マルチアセット
・アロケーション・ファンド
6.30%2.26%+4.04%
ダブル・ブレイン3.44%1.45%+1.99%

これらのファンドが今後どうなるかは誰にもわかりませんが、過去に最優秀ファンドに選ばれたファンドがその後どうなったかは見ることは出来ます。参考までに2015年に最優秀ファンドに選ばれたファンドがその後どうなったかを見てみましょう。

受賞ファンドのその後

ここでは過去にモーニングスターアワードのファンドオブザイヤーの最優秀ファンドを受賞したファンドがその後どうなったかを見ていきたいと思います。

今回はファンドオブザイヤー2015の最優秀ファンドを受賞した8つのファンドについて見ていきます。ファンドオブザイヤーを受賞した年(2015年)とその後の5年間(2016年~2020年)の各年のリターンをそれぞれのファンドが属するカテゴリーの平均リターンと比較した値を表①に示します。つまり各年の(ファンドのリターン)-(カテゴリーの平均リターン)の値です。プラスの年はカテゴリー平均を上回っていて、マイナス(△)の年はカテゴリー平均を下回っているということになります。

また表②には受賞後の5年間で見た場合を示します。

表①1年ごとの比較

ファンド名2015年2016年2017年2018年2019年2020年
スパークス・
新・国際優良日本株ファンド
+8.45%+8.84%+3.31%+9.80%△2.36%+2.63%
三井住友
・げんきシニアライフ・オープン
+15.23%△7.79%△4.39%+0.42%△13.88%△12.65%
グローバル・
ヘルスケア&バイオ・ファンド
+18.73%△15.79%△8.26%+7.78%△1.51%△5.09%
コーポレート・ボンド・インカム
(為替ノーヘッジ型)
+5.10%△3.20%△1.21%+1.32%+2.69%+3.68%
フィデリティ・USリート・
ファンド B(為替ヘッジなし)
+7.58%+0.55%△9.99%+1.85%+4.86%△0.91%
東京海上・円資産バランスファンド
(毎月決算型)
+4.79%+1.25%△3.09%+4.33%△4.86%△8.33%
スマート・ラップ・ジャパン
(毎月分配型)
+5.14%+1.13%△0.59%△1.75%△2.23%△0.07%
ラップ・コンシェルジュ
(成長タイプ)
+3.06%△3.88%+2.84%+0.43%+2.99%+0.64%

表②受賞後の5年間で見た場合

ファンド名ファンドのリターン
(年率)
カテゴリー平均のリターン

(年率)
リターンの差
(年率)
スパークス・
新・国際優良日本株ファンド
13.51%8.46%+5.05%
三井住友
・げんきシニアライフ・オープン
6.53%12.39%△5.86%
グローバル・
ヘルスケア&バイオ・ファンド
3.61%5.27%△1.66%
コーポレート・ボンド・インカム
(為替ノーヘッジ型)
1.08%0.51%+0.57%
フィデリティ・USリート・
ファンド B(為替ヘッジなし)
0.80%1.57%△0.77%
東京海上・円資産バランスファンド
(毎月決算型)
0.70%2.55%△1.85%
スマート・ラップ・ジャパン
(毎月分配型)
1.92%2.55%△0.63%
ラップ・コンシェルジュ
(成長タイプ)
4.00%3.88%+0.12%

上の表を見てみると、ファンドオブザイヤーの最優秀ファンド賞を受賞した2015年は、当然ながら全てのファンドがカテゴリー平均を上回っています。しかしその後はカテゴリー平均を下回っている年も見られます。

また8つのファンドのうち4つのファンドがファンドオブザイヤーを受賞した翌年にカテゴリー平均を下回っています。

さらに受賞後5年間で見ると8つのファンドのうち5つのファンドでカテゴリー平均を下回っています。(大きいものでは受賞後5年間、年平均で5.86%も下回っているケースもあります。)

このようなことから、ファンドオブザイヤーの受賞ファンドを買うという戦略は必ずしもうまくいくとは限らないということが分かります。まさに『過去のパフォーマンスは将来の成果を保証するものではありません』というモーニングスターの言葉の通りです。

その他の年の受賞ファンドについては知りたいという方は下記の記事をご覧下さい。

ファンドオブザイヤーのその後

やるべきではないこと

以上のことを踏まえて投資家の皆さんがやるべきでないことは、ファンドオブザイヤーの結果を見て自分が定期積立購入しているファンドを変えるということです。自分が定期積立購入しているファンドの順位が低かったりランキングに入っていなかったりすると不安になって購入銘柄を変更したくなるかもしれません。

ファンドオブザイヤーは毎年発表され、そのたびに結果は異なります。ファンドオブザイヤーのランキングを見て購入銘柄を変更するということを毎年やっていたらポートフォリオがぐちゃぐちゃになってしまいます。

なのでファンドオブザイヤーのランキングに影響されて購入銘柄を変更するというのはやるべきことではありません。

絶対にやってはいけないこと

更に絶対にやってはいけないことは、現在保有しているファンドを売却して新たなファンドに乗り換えることです。

仮に保有しているファンドが値下がりしていた場合、売却によって損失を確定させてしまうだけでなく、広く分散されたポートフォリオであればいずれやってくるはずの回復局面で取り戻すチャンスを逃すことになってしまいます。

また仮に値上がりしている場合であっても売却し利益を確定してしまうとその時点で課税されてしまします。利益確定しなければ得られていた課税繰り延べの効果をみすみす捨てることになります。

さらにNISAやつみたてNISA枠で保有していた場合には、売却した時点でその分の非課税枠が終了してしまいます。

以上のようなことから、ファンドオブザイヤーのランキングを見て自分の保有銘柄を売却して別の銘柄を買いなおすということは絶対やってはいけません。

まとめ

今回は投信ブロガーが選ぶファンドオブザイヤーとモーニングスターアワードのファンドオブザイヤーの2つのファンドオブザイヤーについて思うところを書いてみました。

投信ブロガーが選ぶファンドオブザイヤーはインデックスファンド中心で、モーニングスターアワードのファンドオブザイヤーはアクティブファンド中心となっています。なのでインデックス投資家は投信ブロガーが選ぶファンドオブザイヤーに、アクティブ運用の投資家はモーニングスターアワードのファンドオブザイヤーに関心を持たれると思います。その際は上記で示したようなやるべきでないこと、絶対にやってはいけないことを心に留めておいていただきたいと思います。

インデックス投資家の皆さんが投信ブロガーが選ぶファンドオブザイヤーを参考するとしたら、あくまでも自分の投資方針の維持を前提とつつ、単年度の結果ではなく3~5年のスパンで見て選ばれ続けているファンドを参考にするというくらいが良いと考えます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました